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【Kis-My-Ft2】シングル「君、僕。」レビュー

Kis-My-Ft2
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君がいるから、僕がいる――。

2018年10月3日、Kis-My-Ft2通算22枚目のシングル「君、僕。」がリリースされた。

今年発表したアルバム「Yummy!!」、シングル「you & me」「LOVE」、そして今回の「君、僕。」。2018年のキスマイからは、7人であることへのこだわりと、周囲に対する愛や感謝が作品を通して強く伝わってくる。

今年、ドーム会場を白一色のペンライトに染めたKis-My-Ft2。

そんな白いキャンパスから、今度はメンバーそれぞれのカラーが溢れ出していく。

きっと7人の個性(色)が集まってこそ、美しく、そして大きな虹は生まれるはずだから―

そんなメッセージも込められたシングルとなっています。

DISC | Kis-My-Ft2 Official Website

 


 

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総評

2018年はキスマイが7人でいることへの強い意志を、楽曲だったりツアーだったり映像作品でひしひしと感じる機会が多かった。

メンバーが欠けることなくグループ活動を続けていくことがいかに難しいかを私たちファン以上に彼らが実感しているはずであり、それを踏まえてどう歩んでいこうとしているのか、ということを彼らは前向きに発信している。

それが、ジャニーズwebの連載を毎日全員で更新することだったり、テレビやラジオの新しい仕事を獲得することだったり、楽曲にメッセージを込めて届けることなのだ。

「君、僕。」収録の5曲も、今のキスマイだからこそできる素敵な楽曲が勢揃いした。

「君と僕とのラブソング」をテーマにした、コンセプチュアルな楽曲たち。カップリングもただのおまけではなく、テーマのもとに作品群の一つとして制作されている凝りようである。

全体的にポップス寄りのサウンドは、アイドルとして王道でありながら、キスマイはあまりやってこなかったテイストで逆に新鮮さがあるのが面白い。

むしろこのタイミングで王道をやることで、デビューから7年で得てきた経験値や年齢の積み重なりからくる地に足の着いた余裕を感じさせている。

 楽曲厨の私としては、楽曲から彼らの決意や意志を反映した表現の広がりを感じられるのがとても頼もしく思えて嬉しかった。

 

楽曲レビュー

君、僕。

作詞・作曲・編曲:ASAHARU / マシコタツロウ / ha-j

  • コーワ「ホッカイロ新ぬくぬく当番」CMソング

キスマイのシングルでは珍しく、王道のJ-POPで送る爽やかなラブソング。

作・編曲のマシコタツロウ・ha-jの両氏は、「キミとのキセキ」「ツバサ」「3.6.5」も手がけており、キスマイの爽やかで明るいポップチューンに定評があり、納得の布陣である。

2段階の間奏だったりガッツリ落ちサビをつける曲構成、ストリングスによる高揚感、キャッチーなサビのメロディはまさしくJ-POPの王道を名乗るのにふさわしいサウンド。

王道でありながら、サビでスクラッチ音を入れたり、間奏にシンセ音を使ったりという仕込みもやっているところにキスマイ曲の味を感じさせる。

サビのベース進行が前半では上に上がり、後半では下がっていくことによって、曲がよりドラマチックになっている。

前半の「君と僕」の二人の関係から、後半には「世界」というワードによって一気に視界が広がっていくストーリーに、ベースが下がっていくことにより切なさが加わっているのだ。

「君、僕。」は曲の長さが5分4秒となっている。基本的にJ-POPは4分~4分半程度で作られることが多く、キスマイもだいたいそのくらいかもっと短い曲がほとんどだ。

先にも述べたが、「君、僕。」には間奏が2段階あり、これが曲の長さの理由だ。

前半はサビからつながる、流れるようなストリングスのメロディ。

後半はラジオボイスで調を一旦落とした後にダンサブルなリズムとシンセの響きが加わる。

普通なら前半か後半のどちらか片方でも十分に成立するが、どちらもふんだんに使っているのが贅沢で華やかだ。

後半パートは高速シャッフルダンス「キッステップ(Kis-Tep)」もあり、パフォーマンス面でも目玉となるパートである。

歌割を見てみると、今回は7人全員にソロパートがあり、自分のメンバーカラーの歌詞の部分を歌っている。

これこそが、真っ白なキャンバスに7人の個性(色)を出していく、というコンセプトの肝となる部分である。しかもひとりひとりにガッツリ4小節割かれているのが革新的だ。

落ちサビにソロパートがある横尾は2小節半だが、そもそもこの後半の聴かせどころの位置に横尾のソロパートが付されていることがキスマイのシングルではなかったわけで、玉森→北山→横尾→横尾・藤ヶ谷という並びは良い意味で衝撃的だった。

2018年の横尾渉、とんでもないな…!*1

ユニゾンも、楽曲の歌割としてはこれまでにあまりなかった組み合わせである。

1Aは玉森・二階堂/北山・横尾、1Bは千賀・宮田、2Aは宮田・藤ヶ谷、2Bは二階堂・千賀、Dメロは藤ヶ谷・北山、落ちサビは横尾・藤ヶ谷。

藤ヶ谷・北山は定番であるが、その他の組み合わせはシングルの歌割では珍しい。

7人いれば2人の組み合わせは21通りあるわけで、そのバリエーションを楽曲内でも楽しめるのは嬉しいことだ。

ソロパートに気を取られてこの曲がラブソングであることを忘れそうになるが、これまたよくできたストーリーになっている。

1番では「君に会いたくて 心が弾けるように駆け上るExit」と恋の始まりの高鳴りを歌い、2番の「今日こそはこの決意を君に届けよう」からDメロの「静かに差し出す ピンクのリングケース」でプロポーズしている。

また、サビの歌詞でも時間の変遷を追うことができる。1番「恋する温度で」→2番「愛してあげたい」→ラスサビ「歩いてゆこうよ」と段階を経てこの曲のふたりが最高のラブストーリーを描いていることがわかる。

「果たしてどんなHappinessが 僕と君を待ってるだろう」というフレーズ、そしてそれぞれの色の歌詞がラスサビで「七色の虹」となって合わさる構成がたまらなく好きだ。

最初から最後まで明るく前向きな言葉が並んでいるのに押し付けがましくないのは、サウンドのさわやかさと歌詞のストーリーがうまく噛み合っているからだろう。

試聴の段階ではピンときていなくても、フルで聴いたりMVや歌番組でのパフォーマンスを見るとどんどん耳に馴染んで好きになっていくから不思議だ。長く聴き続けたい一曲である。

 

Rainy Days

(0:47~)

作詞:Atsushi Shimada

作曲:P3AK / Tommy Clint

編曲:P3AK

  • 初回限定盤A収録

雨をモチーフに大人な恋を歌ったミディアムナンバー。

作詞は「セルフィー」のAtsushi Shimada氏、作曲は「蜃気楼」のP3AK氏と「Shake It Up」「Let it BURN!」「YES! I SCREAM」等のTommy Clint氏。

オルタナティブR&Bを取り入れたサウンドでしっとりと情感たっぷりに歌い上げる今作は、ポップスが多い今回の収録曲の中でひときわ異彩を放っている。

確かに世間受けを狙うならポップスをやるのは大正解だが、そればかりだと物足りなくなるものだ。

一定の層にアツく支持されているエレクトリック寄りのサウンドもちゃんと入れてくるバランス感覚はお見事。めちゃくちゃ好き…。

カップリングにしておくにはもったいない完成度に「おいおい、やってくれたな!!!」という興奮が収まらない。

これが表に出ないのは非常にもったいないので、キスマイは早くカップリングベストを出すべきでは??? 何なんこのクオリティ。

D♭メジャーの優美かつ大人びた音階が、悲しみや涙を乗り越えて笑顔になっていく歌詞のストーリーにとても似合っている。

平均年齢が30歳を超えてきたキスマイが、こういうテイストの曲を背伸びせず実感を持って歌えるようになってきたということが嬉しい。

大人っぽい曲、となったらバラードだったりジャズだったりというのがありがちなパターンだが、ジャニーズのEDM班であるキスマイがオルタナ系のR&Bをやるというのは面白い。

今年は「Because I Love You」や「ConneXion」でR&Bを取り入れているが、しばらくはこの路線は続きそうだ。(というか続いてほしい。)

ぐんぐん歌唱力が向上しているキスマイであるが、この「Rainy Days」はボーカルが際立っていて、それぞれのメンバーの歌声を堪能できるのも聴きどころの一つだ。

 

北山のAメロ。低めのキーを抑えめに歌う出だしから一瞬で世界観に引き込まれる。

誰がAメロを歌うかで曲の印象がガラリと変わるが、北山がAメロを歌うと一気に現実味のある物語性が増す。

掛け合いにプレーンな声の玉森がいることで、相乗効果でグッと曲の中に入り込ませている。

Bメロは藤ヶ谷が情感たっぷりに歌う。シンプルなメロディを流れるように歌いながらも、一音一音の処理が丁寧にされているのがよくわかる。

フェイクや見せ場のひとフレーズに強い藤ヶ谷だが、ガッツリとメロディを歌うと儚さを帯びた歌声で魅了してくる。

サビでは掛け合いの部分を、二階堂→横尾→千賀→宮田が担当。

この掛け合いの何が良いって、4つ目の(In my way)だけ最後の音が下がるメロディになっているところだ。

ここを宮田に宛てがった大人は天才がすぎるな???

ここのアタックが強いと次に続く「気づかせてくれた」が妙に浮いてしまいかねないのだが、甘さのあるクリアな声で柔らかく着地しているのが秀逸である。

2番の歌い出しは二階堂から。もともと低~中音域がよく響く二階堂だが、低めのキーでもハスキーな声の質感がちゃんと残っている。

少年と青年の間にあるような、無垢だけどほろ苦さのある歌声は年々表情豊かになっている。

Aメロ後半を歌う千賀は、この曲の雰囲気に合った丁度いい甘さと憂いを醸し出す。

もっとガンガン感情を吐き出すような歌い方でも悪くないのに、このパートの歌詞と前後のバランスにうまく調和したやや抑えめの歌唱が素晴らしい。

続く横尾のBメロ。ここまで本人の声とキーに合ったパートがいまだかつてあっただろうか。

ここ一年でグッと歌唱力が向上している横尾は、今年はラップだったりファルセットだったり、「君、僕」では落ちサビにソロがあったりと、急速に表現の広がりを見せている。

もの悲しさや哀愁さえ感じさせる歌声は、2番Bメロに求められる意外性をきちんと体現していると言えるだろう。

Bメロ後半の宮田は、前半では背中を押すように、後半は歌詞のごとく優しく包み込むように歌っている。

この2行に彼の歌唱の良さが詰まっているのがお分かりいただけるだろうか。

よく通る声質と癖のない歌い方は、ユニゾンになるとどうしても引き立て役になりがちだが、ソロパートになるとしみじみ良さを噛みしめることになる。

「優しく抱きしめてくれた」っていう歌詞がぴったりハマっていて涙が出そう。

Dメロに満を持して登場する玉森は、「止まない」「やがて」のしゃくりが絶妙だし、説得力を感じさせる歌声に感服する。

彼が「止まない雨はない」って言うんならないんだし、「やがては虹となり」って言うんなら虹になるんだよ!!!わかったか!!!となぜか私が強気になってしまうのはなぜ…?

それくらい歌詞をストレートに投げる玉森の歌唱は力があるのだ。

いずれにしろ、きっと2~3年前までなら「ちょっと早いね」と外されるタイプの楽曲を適材適所で歌いこなすキスマイに無限の可能性を感じずにはいられない曲、それが「Rainy Days」なのである。

 

ソライロ

(1:46~)

作詞・作曲:竹内雄彦

編曲:千葉純治

  • 初回限定盤B収録

甘酸っぱい2人の恋を描いたピアノバラード。

「Dream on」「今はまだ遠く果てしない夢も」「HOME」等、キスマイの“エモい”バラードを手がける竹内雄彦・千葉純治コンビによる作品。

正直言ってこの路線は若干食傷気味ではあるが、こういうピアノをモチーフにストリングスが重なるバラードもやれる多様性は捨ててはいけないと思うので、たまにやってほしいところではある。

おっ、と思ったのがどのメンバーも若めのトーンで歌っているところだ。

意識してやったのかどうかはわからないが、他の曲と比較してもやや上めのピッチなのが、とてもこの曲の世界観に合っている。

何より、歌い出しと落ちサビに二階堂が起用されているのが、この曲が描く情景である「学校帰りに川辺に座りながら空を見上げるドキドキな2人」*2 をドンピシャで表現している。

少し張り上げるように歌うのが、この曲の主人公を等身大で表しているかのようだ。

この「ソライロ」の2人が、時が経って「Because I Love You」の2人になっていくのだろうか。

この短いスパンで学生時代の恋をテーマにした曲を出すって、なんかつながりを感じてしまう。

私が石油王だったらソライロとBILYを使ってキスマイ主演でショートムービー作るのにな。ハロウィンジャンボで3億円当てるしかないな。(無理)

 

Your Life

(2:44~)

作詞:井上紗矢香

作曲:take4 / U-KIRIN / KE1

編曲:U-KIRIN

  • フジテレビ系「もしもツアーズ」テーマソング
  • 通常盤収録

旅へと誘う疾走感のあるポジティブポップチューン。

作詞は、伊藤千晃「happiness」藤田ニコル「E.E.O!」等を手がけるシンガーソングライターの井上紗矢香。

作曲は、NEWS「BYAKUYA」「4+FAN」等のtake4、Little Glee Monster「CLOSE TO YOU」のU-KIRIN、Sexy Zone「ベイビーロマンチカ」V6「NEVER」の作詞を手がけるKE1が参加している。

G♭メジャーの明るく爽やかなサウンドは、これがA面でもおかしくないくらい華やかで耳に残る。

「君、僕。」と双子のような感触を受けた。

キスマイといえば、シングルの収録曲はジャンルやテイストをそれぞれ違うテイストを入れてくる傾向があるが、「Your Life」と「君、僕。」が系統を同じくするという意味では珍しいパターンだ。

1番と2番で藤ヶ谷・北山を入れ替えたり、Aメロ2行目を玉森固定にしていたり、Bメロで二階堂→横尾→千賀→宮田でつないだり、落ちサビを北山→藤ヶ谷にする歌割に、キスマイ楽曲の様式美のようなものを感じさせる。

2番Bメロの宮田パートの「頑張れたじゃん 今日の自分」が、自己肯定感マシマシになるのでオススメ。

あと、落ちサビの北山「きっと誰も生きている」にすごく生命力を感じる。

 

Still song for you

(3:41~)

作詞:草川瞬 / T-CHU

作曲:草川瞬 / RINZO / T-CHU

編曲:RINZO Additional Arrangement:HIKIE

  • 通常盤収録

失恋の傷を引きずりながら相手を思い続ける切ないミディアムナンバー。

Hey!Say!JUMP「題名の無い物語」作曲やKAT-TUNアルバム「CAST」にコーラスとして参加している草川瞬氏、

自身の所属するKingrassHoppers やSEAMOを手がけるRINZO氏が参加。

HIKIE氏はキスマイでは「L.O.V.E」のAdditional Arrangement、「7th Overture」の作曲を手がけている。

このベース進行を嫌いな人いないんじゃないかっていう、鉄板のエモーショナル進行が使われている。

ストリングス強めかと思えば裏でエレキギターが鳴っていたりエレクトリックな音も鳴ってたりして、厚みのある音の重なりが余計に切なさを増長する。

Bメロでは三連符が出てくる。これがメロディの余韻を引き立たせ、歌詞に乗る感情がより強く伝わってくる効果をもたらしている。

1番は藤ヶ谷がこのパートなのだが、ほんの少し遅れて音を取り余韻たっぷりに歌っているのが、ここを三連符にした意図にぴったり合う。

歌詞は、さよならって吹っ切れるような恋愛じゃなくて、フラれたにせよ円満に別れたにせよ未練タラタラなのがありありと伝わってくる。

大切な人を失い、もう二度と戻ってこない喪失感をこのサウンドに乗せてこられたら、感情かき乱されないわけがない。

「蜃気楼」「Because I Love You」「Still song for you」と、今年は失恋ソングが豊作のキスマイ。

さすがにリードソングに持ってくるのは難しいが、このラインの楽曲を好む人は多そうなので、もっと広くキスマイの音楽性が世間に知られてほしいと願うばかりだ。

 

おわりに

「君、僕。」「Rainy Days」「ソライロ」「Your Life」「Still song for you」

5曲とも「君と僕」の関係や虹につながる空や雨をモチーフに、8周年へ向けて勢いづく楽曲が揃った。

どの曲も今のキスマイだからこそ良さを感じられる仕上がりだ。

初回限定盤Aの「君、僕。」MV&メイキング、初回限定盤Bの「KIS-MY-PARTY」、通常盤ボーナストラックの「KIS-MY-VOICE」、そして3形態同時予約シリアル動画「LIVE TOUR 2018 Yummy!!~you&me~ 先得スペシャルMOVIE」と、特典コンテンツもシングルとは思えないボリュームで楽しませてくれている。

7人の個性(色)が集まってこそ、美しく、そして大きな虹は生まれるはずだから―

美しく大きな虹を共に眺める未来を夢見させてくれるKis-My-Ft2に、これからも目が離せない。

 

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*1:「サクラヒラリ」のDメロや「道しるべ」の落ちサビで前例はある

*2:2018/9/5 BLOG | Kis-My-Ft2 Official Website

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