2017年6月28日、嵐の52ndシングル「つなぐ」がリリースされた。
前作の「I’ll be there」からわずか2ヶ月でのシングル発売。近年はシングル3枚+アルバム1枚のペースで安定しているので、もうそろそろアルバムの発表もあるかもしれない。いずれにしても、嵐は今年も精力的に音楽活動を展開しているようだ。
嵐52枚目のシングルは、大野智主演映画「忍びの国」主題歌です。嵐としましては約4年ぶりとなる映画主題歌。(注:映画『プラチナデータ』主題歌「Breathless」以来。)歌詞の世界観やメロディーの広がり最寄りスケールの大きい楽曲となりました。無情な戦国の世でも、一途な愛、人を思う心が、時代を救い導いていく。ギターと三味線が繰り広げるスリリングなメロディーに、切なくも心に響く嵐のボーカルが絡み、これまでにない“究極のラブソング”となっております。
では、通常盤収録曲をレビューしていく。
つなぐ
作詞:paddy、作曲:Peter Nord・Kevin Borg、編曲:Peter Nord・佐々木博史
映画『忍びの国』主題歌
忍者を題材にした映画主題歌ということもあり、和楽器とロックサウンドが融合した意欲作。嵐のこの和風サウンドの路線は一時的なものだと思っていたけど、意外と続いてるね…?
嵐は日本の象徴(アイコン)的な仕事はこれまで数あれど、音楽面で「日本」「和」を全面に押し出すようになったのはアルバム「Japonism」(2015年)以降だろう。映画「大奥」主題歌の「Dear Snow」(2010年)はトラックのメロディーこそ若干「和」を感じさせるところがあるが、あれはポップス寄りのバラードで和楽器は出てこない。
和のテイストの曲はその辺のアーティストがやると、相当センスよくやらないとダダすべりになる際どいモチーフ。その点、ジャニーズと「和」は古くから親和性があるため、ダサいとカッコいいのスレスレのところを華麗に攻めていける強みがある。
やりすぎるとトンチキソングになりかねない和風テイストの曲を嵐があえて積極的にやっているのは、「国民的アイドル」として「日本」を背負わざるを得ないようなところもあるのかもしれない。この辺のことは語りだしたら長くなってしまうので割愛するが、「変わらない良さ」と「絶えず変化し続けること」をうまくバランスを取りながらやっているな、というのが今の嵐に対する私の印象である。
表題曲「つなぐ」は好みか好みでないかで言うと、ぶっちゃけ私の好みではないのだが、それでも聴きたくないというほど嫌いなわけでもない。それはやっぱり「嵐」としての歌声を嫌いになれないからだろう。
哀愁を感じさせる嵐のユニゾンワークは年々磨きがかかっており、マイナー調だったりミディアムテンポのときにより一層良さを感じることができる。大野の哀愁や憂いを帯びた声に他の4人も引っ張り上げられ、その結果グループとして哀愁性を獲得したのだとしたらこれほど素晴らしいことはない。
2サビ後の間奏、ストリングスのバッキングとブラスサウンドと三味線や琴などサウンドのフルメンバーが勢揃いした!と言わんばかりの盛り上がり方がとても好きだ。単に私がバッキングの音が好きだってだけかもしれないけどw
Reach for the sky ~天までとどけ~
作詞:RUCCA、作曲:Simon Janlov・Funk Uchino、編曲:藤間仁
JAL「先得キャンペーン 2017」CMソング
夏にピッタリの爽やかなポップソング。嵐にはこういうポップスど真ん中が本当によく似合う。若い後輩たちに負けじとずっとこの路線の曲も歌い続けて欲しいと願ってやまない。
イントロ~1番Aメロあたりが「Treasure of life」(「I’ll be there」カップリング曲)に似通うものがあって、シングルA面は色んなタイプの曲をやりつつカップリングで雰囲気が地続きの曲をやってるのが楽曲厨の心をくすぐってたまらない。SUKI…
流れるようなストリングスだったり、ファンキーなギターのカッティング、スラップを効かせたベースライン。好きな要素が詰まっているのは言うまでもないが、一番のポイントはDメロの相葉→櫻井パートではないだろうか。色んなエフェクトやツールが使われているのかもしれないが、ここの二人のメロディーラインがめちゃくちゃ美しいのである。
相葉・櫻井が昔に比べて格段に歌がうまくなったことで、嵐の歌声のクオリティがめちゃめちゃ上がっている。昔と言ってもどの時点と比べるかにもよるけど、私がかなりヘビーに嵐を見ていた2009年~2012年あたりはもちろん、00年代とは段違いである。まあそれだけ楽曲制作に注がれる予算が増えたのだろうけど。
A面でなくカップリングで嵐の歌声の経年向上をここまで感じさせられるとは思ってもいなかった。
抱きしめたい
作詞:IROCO-STAR、作曲:Simon Janlov・Mr.Mustard、編曲:前口渉
同じ夏の爽やかなポップスでも、前述の「Reach for the sky ~天までとどけ~」よりも大人な落ち着きを感じられる。2017年の日本の音楽シーンを席巻する!としつこく言ってるトロピカルハウスの波が、嵐にもちゃんと来てるのを観測できて嬉しいよ私は。
限りなくポップスに寄ったトロピカルハウスのサウンドは、ダンスミュージックに馴染みのない層にも受け入れられやすく解釈されている。ある特定の音楽ジャンルを一般大衆に聴かせるにはポップスで中和させるのが手っ取り早い。ジャニーズの中でも嵐はその旗手とも言える。ジャズやファンク、それこそ和テイストだってなんだってポップスと融和させて世に放つのが絶妙に上手い。
そうやってポップスと合わされたジャンルにハマっていくかそれっきりになるかはそのジャンルの裾野の広さ次第だけど、トロピカルハウスはその点取っ付きやすいのでみんな軽率にハマればいいと思う。
ジャニーズだとKis-My-Ft2「One Kiss」「Baby Love」、山下智久「BIRD」がテイストが近いので是非聴いてみて欲しい。
Under the rader
作詞:市川喜康、作曲:Kevin Charge・Erik Lidbom、編曲:Kevin Charge
ベースラインが強めに鳴るダンサブルなナンバー。四つ打ちのリズムにブラスやコーラスがメロディに華を添える。嵐はどんな曲をやらせても嵐の色に染めてしまう。ダンスミュージックの中にも、やっぱりどこか切なげなところがあるからたまらない。
デジタルなワードが並ぶ歌詞もおもしろい。近未来を感じさせつつも、人と人とのアナログな愛を描いている。どこのフレーズを切り取っても、人によって捉え方が変わりそうな余白を感じさせる歌詞世界。あなたはどんな愛を思い描くだろうか。
総評
夏に聴きたくなるような爽やかさや躍動感を感じられる曲が揃った、今回の嵐のシングル「つなぐ」。タイアップに沿って作られた表題曲と、楽曲そのものにフォーカスしたカップリング、それぞれに良さがあり嵐の歩みを感じさせるものがあった。
まだ聴いていないという方、ぜひ通常盤を手にとってみてはいかがだろうか。
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