2019年11月13日、Kis-My-Ft2通算25枚目のシングル「Edge of Days」がリリースされた。
表題曲「Edge of Days」は、北山宏光主演 ドラマパラビ「ミリオンジョー」主題歌。
カップリングの「Mr.FRESH」は玉森裕太出演 ユニ・チャーム「ウェーブ フロアワイパー」CMソング、「小悪魔Lip」はdTVオリジナル番組「キスマイどきどきーん!」テーマソングとなっており、豪華タイアップ3曲を含む全4曲が新録となった。
今のキスマイが歌うにふさわしい個性豊かな楽曲が勢揃いしている。
総評
2019年のキスマイがリリースしたのは、本作を含めてシングルが3作(「君を大好きだ」「HANDS UP」「Edge of Days」)、アルバム1作「FREE HUGS!」。
等身大なポップスの印象が強かった2018年に比べ、アラサーの大人っぽさや強さなどを感じさせる楽曲が多かったように思う。
今回の「Edge of Days」収録曲は、そんな2019年のキスマイ楽曲を総括するようなサウンドが打ち出されている。
Kis-My-Ft2というグループの音楽面の強さを特に感じさせる点が、「楽曲に合ったボーカルワークの秀逸さ」だ。
ソロとユニゾンの組み合わせや配置、歌割で新鮮さを出したり、絶妙に声色を使い分けたりアタックの強弱で緩急をつける表現のテクニックなど、細かく散りばめられたギミックがちぐはぐになることなくうまく噛み合っている。
ワンフレーズワンフレーズを丁寧に作り上げながらも守りに入らず攻める大胆さに、キスマイと作家陣、レーベルスタッフの仕事ぶりが光る。
ジャンルの枠にとらわれず様々なテイストの曲に挑戦できるのがアイドル楽曲の面白いところだが、この振り幅があればあるほどさじ加減の難しさもある。
そこをしっかりチューニングして、魅せたい軸をぶらさないまま新たな化学反応を起こすことに成功しているのである。
ロック、ディスコ、ポップス、ウィンターバラードと四者四様でありながら、どれもキスマイが持つ顔の一つとして成立しており、Kis-My-Ft2の個性豊かな側面を感じることができる作品となっている。
楽曲レビュー
Edge of Days
作詞:HIKARI
作曲:HIKARI
編曲:HIKARI
ドラマパラビ「ミリオンジョー」主題歌
イントロ一発目のギターのメロディからガッチリ心をつかまれるロックナンバー。イントロの時点ですでにグッと曲の世界に引き込まれる。
キスマイでは「赤い果実」(2017)・「Invitation」(2018) などのHIKARIが楽曲を手掛けている。
【WORKS】
昨夜Mステでも披露されましたが、来週11/13発売のKis-My-Ft2のシングル「Edge of Days」の作詞・作曲・編曲を手掛けさせていただきました。マグマを内包したような、熱のある佳曲(と自分で言ってしまいますが)になってますので、是非チェックしてください!#EdgeofDays#KisMyFt2— HIKARI(石津隆光) (@HIKARI_142) 2019年11月9日
今作は北山主演ドラマの主題歌ということもあり、歌割に関しても北山が多くフィーチャーされている。
もともとキスマイの歌声の主軸として安定感のあるボーカルを聴かせている北山。「Edge of Days」の歌い出しに見せるドラマチックな切迫感とどこか客観視しているような冷静さに、自身が演じる呉井というキャラクターの狂気をはらむ生き様も滲ませるかのようだ。
次に同じメロディを藤ヶ谷も歌うのだが、上下に動きのあるボーカルのメロディをビートに沿うように音をキャッチしながら、北山とは異なる方向に世界を展開させる。
無骨な印象を与える北山と、柔らかさと奥行きのある藤ヶ谷を順に並べる対比が実に良い。
そこに玉森がそれぞれと同じフレーズを歌う。
北山 →北山・玉森 →藤ヶ谷 →藤ヶ谷・玉森 という歌割はキスマイではよく見られるパターンであるが、単に並べたというわけではなくそこにはちゃんと狙いがあるのがわかる。
玉森の声が持つ圧倒的な光の要素とこの箇所のメロディの合致によって、藤北が縦横に広げた世界を玉森が全方向に拓いているのだ。
強いメロディと北山・藤ヶ谷の声にパワー負けしない玉森の歌声は、紛うことなきキスマイのエースとしての存在感がある。
2番では、玉森 →玉森・北山 となるが、サビを挟んだあとの玉森の、まるで瓦礫の山に降り立った大天使みがすごいのだがおわかりいただけるだろうか。
この感覚は「Break The Chains」(2018)を初めて聴いたときにも味わった気がするし何ならそういうニュアンスのことをレビューに書いてたな…
(【Kis-My-Ft2】アルバム「Yummy!!」レビュー – みやまみゅーじっく)
話を戻そう。続いて間髪入れずに突入するBメロ。
1番は、宮田 →宮田・横尾 →千賀 →千賀・二階堂。
2番はソロが入れ替わり、横尾 →横尾・宮田 →二階堂 →二階堂・千賀 と進行する。
このソロパートの入れ替わりによって雰囲気が違ってくるのだ。
1番は宮田の跳ねるような音の掴み方が妙な妖しさを漂わせ、特にフレーズ終わりのポルタメントを大げさに仕込むことによって一層ミステリアス感が増している。
ポルタメントをシングルの切るに切れない1番Bメロに組み込む試みが実に攻めている。それを見事に宮田が使いこなしていてハマっているのもエイベの狙い通りというところか。
2番では横尾がこのフレーズを歌うが、こちらはすでにビートが強めに鳴っている状態なので、音をきちっと1個ずつ取りポルタメントはあまり強調していない。
というのも、1番「鏡の前に立ち竦む 虚ろな目に宿した」が、見えているものを描写しているのに対して、
2番「価値などない星屑に 名前を付けて飾った」は抽象的な歌詞になっている。
そのため、この部分はシンプルに歌うほうがかえって伝わりやすいということなのだろう。
この1番と2番の対比はBメロ後半でも感じるところで、
1番は、キックに1拍ずつ休符が入る中、千賀が力強くドラマチックに。
2番では、二階堂が休符が入らず全拍打たれるキックを飼いならすかのような疾走感を伴って堂々と歌い上げる。
この二人はテクニックというより声の素材を活かす形でコントラストを付けている。
どのパートもボーカルワークで引っかかりを作って曲の世界観に引き込みながら、トータルバランスは崩さない。むしろ相乗効果でパワーを増している。
シングルのAメロ~Bメロでこれをやれるのは、常に進化を続けるキスマイとそれを支えるチームの総力が大きく上がっている表れだろう。
続いてサビについて。混沌とした世界観を醸し出すB♭mのA・Bメロから、サビはD♭に転調する。
半音上げの転調ではなく平行調への転調のため、ガラッと一気に世界が開けるような印象になる。
効果音や使用している音色も相まって、一度閉じた扉を全て開け放つ感覚だ。
陰と陽でメリハリを付けることで聴いていて飽きない上に、全体のまとまりを失わない構成が絶妙である。
「Edge of Days」の何が良いかって「賭した絵札は~」でD♭/Fが使われていること、これに尽きる。
この組み合わせは割とありがちなのだが、だからこそ使うべきところでドドンと使う良さがある。なんたって響きが美しすぎるもんな…。それに続いて音階が上がっていく進行も大好物だ。
細かいディテール以前に、枠組みとしてはめられている音そのものがちゃんと印象づくように作られているのがわかってそりゃ好きだわ…と降参するしかないのである。
歌詞は、サビの「どんな嘘や痛みも切り裂いて行く 胸に光がある限り」にすべてが凝縮されていて、ネガティブ要素の存在を無視せずバネにして道を切り開いていく様は、Kis-My-Ft2自身にも重なるところがある。
また、主題歌になっているドラマ「ミリオンジョー」とリンクしている部分が出てくるのもポイント。
「放つ思いはMillion」は作品タイトルの“ミリオンジョー”と、
「On the edge of glory days」は主人公が編集者として勤める漫画雑誌“グローリー”とかかっている。
さりげなく繋がりが感じられるのもタイアップの醍醐味だ。
キスマイのガツンとくる強さをを存分に感じさせてくれる曲が、シングルで聴けるという贅沢さがたまらない一曲、それが「Edge of Days」なのだ。
Mr.FRESH
作詞:Kanata Okajima / pw.a
作曲:Kanata Okajima / pw.a
編曲:pw.a
ユニ・チャーム「ウェーブ フロアワイパー」CMソング
リズミカルなディスコサウンドに遊び心のある歌詞がクールでスタイリッシュ。思わず体を揺らしたくなるリズムとフレーズのリフレインがクセになる。
「Toxxxic」(2018)詞曲、「ConneXion」(2018)作曲、「HUG&WALK」(2019)作詞、など近年提供作の多いKanata Okajimaがpw.aと共作した今作も、例にもれずハイセンスな曲に仕上がった。
キスマイがここ1~2年で打ち出した様式美と、この曲で新たに見せる新鮮さがうまくミックスされていて、これからのKis-My-Ft2にとって新機軸になりうる楽曲だなとワクワクさせてくれる。
ここ1~2年で打ち出した様式美、それは“アラサーのこなれ感”と“使いどころをマスターした歌割”だ。
年齢と経験を重ねてきたことによって出てきた、周りを見る余裕や落ち着きみたいなものが楽曲にも垣間見えるようになっていて、「Invitation」(2018)や「HUG&WALK」(2019)といったアルバムの頭を飾る曲でアラサーのこなれ感を楽曲に昇華させているのは特筆事項だろう。
そしてこの「Mr.FRESH」も例外ではなく、軽快かつ押し付けがましくなさが今のキスマイにとても合っている。
また、これまでの藤北玉/横宮二千の歌割を積極的に崩しにかかりいろいろなパターンを試みた結果、メンバーひとりひとりの特性を活かしたパートが宛てがわれるようになったというのもある。
混じり気なくまっすぐナチュラルなら玉森、インパクトの強い箇所で二階堂、柔和なスイートさは宮田、華やかさのアクセントは千賀、というように。
ドンピシャで合う歌割に加えて、新しさを感じさせるのも忘れない。「さあCall me Mr.FRESH」の低音のパート回しは、これまであまり聞くことのなかった響かせ方をしており、メンバーによっても違いがあるのも聴いていて楽しい。
昨今のキスマイ楽曲の流れを汲みつつ、新しいサウンドや試みを取り入れて1つの形に仕上げた意欲作である。
小悪魔Lip
作詞:竹内雄彦
作曲:竹内雄彦
編曲:竹内雄彦 / 千葉純治
dTVオリジナル番組「キスマイどきどきーん!」テーマソング
ギターの疾走感があふれるポップチューン。「キスマイどきどきーん!」のテーマソングということもあり心臓の鼓動を冒頭に入れたり、歌い方もかわいいに寄せたりと、とてもキュートな楽曲に仕上がった。
キュートなんだけど媚びすぎず、その塩梅がちょうどいい。
前テーマ曲だった「冒険者へ」のテイストを引き継いでおり、2曲合わせて兄弟のような関係性も感じられる。
A・Bメロを1番は玉森→宮田→千賀→二階堂という歌割なのだが、弟組で1番を歌うというのは珍しい流れだ。(記憶がないだけかもしれないが…。)
宮田に「恋は魔法さ」って歌わせた時点でエイベと固い握手を交わすしかなかった。彼のためにあるパートとしか言えないやつだね…。
Dメロはまるっと全て横尾パート。満を持して真打ち登場した感がすごい。
メンバーが囲んで見守る図がすっごいしっくりくるというか、みんなが目を離せないし耳を離せない(あえてこの言い方)人なんだよな。一音たりとも聴き逃してはならない…!という思いにさせられるって稀有な存在ではなかろうか。
ポップでキュートな曲でこの効果を使ってきたのが興味深い。
ところで、ザ少年倶楽部プレミアムでの曲披露では凄まじい合いの手が公式から発信されたが全く覚えられる気がしないので、ツアーのセットリストに入るかどうか事前に教えといてくれるとありがたい…それか正面モニターに全部映しといてほしい…たのむ…。
Innocent
作詞:Chime
作曲:Chime
編曲:石塚知生
あたたかな質感で紡ぐウィンターバラード。ピアノとストリングスのメロディに空気を含んだようなビートが冬らしいサウンドだし、雪に心躍らせるように弾むベースラインが曲の雰囲気をやわらかくしている。
そこに歌声が優しく寄り添っているのだが、意識的に曲のコンセプトに合った歌い方をちゃんと7人で統一できていることは評価すべき点だろう。
当たり前といえば当たり前だが、ここにズレがあると聴いていても違和感を覚えてしまう。さりげないようでいて細部まで神経を使っているのだ。
2番Bメロの二階堂→横尾→二階堂という変則的な歌割が新鮮だ。おそらくサビ直前の「届け」を二階堂に歌わせたいがための歌割なのでは?と思ってしまうくらいハマりが良い。
遠くへ投げるようにまっすぐ声を飛ばす歌唱と歌詞が、少年のようなピュアさや素直さをも感じさせる。
1番では二階堂→横尾→北山であるのを、2番ではまた二階堂に戻してサビに入るあたり、どうしても歌わせたかったのだろうな。そりゃそうだろうな、めっちゃいいもん…。
「Innocent」の二人のあたたかく幸せな空気感がただただ永遠に続けばいいのに…と素直に思えるこの感覚、とてもいい結婚式に出席したときの幸福感に似てるな。愛だ…。
おわりに
2020年元日に、春のアルバム発売決定と、5大ドームツアー(4/9~6/7:東京・名古屋・埼玉・大阪・福岡)の開催がアナウンスされた。(今年も当然のように5大ドームとして鎮座するメットライフドーム)(もはや誰もツッコまない件)
2019年末には紅白歌合戦に出演し、ドラマ・映画・バラエティでもますます活躍がめざましいKis-My-Ft2が、音楽面でも常に新たな挑戦を続けているのは楽曲ファンとしてはやはり嬉しいに尽きる。
キスマイが打ち出す次なる一手を全力で楽しみに待ちたい。
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